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きせんのかいりょう

汽船の改良

寺田 寅彦

「東京朝日新聞」1907(明治40)年8月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,767 字 · 4 页

青空文庫

船に酔わぬ人に云わせると航海ほど愉快なものはない。しかし吾々船に弱い者から見るとこんな厭なものはない。船室に潜り込んだが最後、もう頭が上がらぬ。海上の日の出がどんなに美しかろうが、海鳥が飛ぼうが、鯨がはねようがそんな事はどうでもよい、一刻も早く目的地に上陸して動かぬ地盤が踏みたいと願う。そしてなるべくなら船に乗りたくないと思うが、海国の悲しさには、ちょっと踏み出せば是非とも船でなければならぬ。止むを得ないとなればどうか揺れない船が欲しいと思うた、誰も変りはあるまいと思う。

造船学者の方から見れば汽船の改良すべき点は色々あろうが、乗客の側から云えば船体の構造、機関の種類はどうでもよい、ただ安全で、動揺が少なくて、そして速力が大きければよいのである。造船学者もこの点については如才なく色々工夫をしている。

船の動揺には横揺れと縦揺れとある事は誰も知る通りで、大抵の場合には両方同時に起る。殊に小さな汽船の艫の方などへ乗ると、縦横に揺り上げ揺り下ろされる。もしどちらか一方だけでも出来ればいくぶんか楽であろうと思われるが、この中で横揺れの方だけはよほど少なくする方法が色々発明されている。