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じんちょうげ

沈丁花

宮本 百合子

「文芸春秋」1927(昭和2)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,478 字 · 19 页

青空文庫

どこかひろがりと土台のある調子を感じた。はる子に対しても仕事の内容などについては口を緘していたのが愉快であった。彼女からは何が生れるか? よく実った稲ほど穂を垂れる。然し最もよく実る稲は若い時最も真直に頭を上げていた稲だ。というのは全くだ。それ故はる子は千鶴子のいろんな癖もまあまあと思い、彼女が本気になることをよろこんだ。そのような心掛は、幸千鶴子にも伝わったと見え、彼女は互に知り合ったことを喜ぶ言葉を洩した。弟が夕方、多分学校へ出る途中であろう、

「姉さんがこれを……」

と云って、国の母の手づくりのかき餅、糟づけの瓜など届けて呉れることがあった。千鶴子が思いがけず半紙から練香を出して火鉢に入れたりした。

「国にいた時分私もよくこの香をねったものです」

短い時間ずつではあるが会う度も重り、彼女の些やかな親切な心づかいによっても次第に友情は深まるのが自然であった。が、実際はそう行かなかった。はる子は、千鶴子と喋っていると、屡々心持の奥に原因ある居心地わるさを感じるようになった。何というか、次第に彼女の気の毒さとそぐわなさとを同時に感じる度が強くなったとでも云うのであろうか。