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かわみずのはなし
河水の話
小川 未明
「早稲田文学」1924(大正13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,668 字 · 8 页
河水は、行方も知らずに流れてゆきました。前にも、また、後ろにも、自分たちの仲間は、ひっきりなしにつづいているのでした。そして、どこへゆくという、あてもなしに、ただ、流れている方に、みんなはゆくばかりでした。
前にいったものは、笑ったり、わめいたり、喜ばしそうに踊ったりしていました。はやく、まだ見ない、めずらしいことのたくさんある世界へゆきたいと、あせっているようにも思われたのです。
ほんとうに、それは、遠い、また、長い旅でありました。すべてのことに終わりがあるように、この旅も、いつかは尽きるときがあるでありましょう。
河水は、昼となく、夜となく、流れてゆくのでした。
ある日のことです。ふいに、黄色な、破れた袋のようなものが、飛び込んできました。それはバナナの皮でした。
「ああびっくりした。やっと、私は、目がさめたような気がする。」と、バナナの皮は、いいました。
南洋の林の中に、あったころのさわやかな香いが、まだ残っていて、このとき、ふたたび冷ややかな水の上で、したのでした。
「おまえさんは、いままで眠っていたのかね。」と、水は、たずねました。
「ここは、どこですか?」