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つがるのむしのす

津軽の虫の巣

宮本 百合子

「日米時報」1919(大正8)年6月21日・28日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,198 字 · 10 页

青空文庫

それはこうである。

元来火という物は、神代の昔から万物の不浄を潔め、邪気を払う物とされている。それ故、この珠をも火に焼いて、若し色も変らず、悪臭も放たなかったら、それは穢ある虫の営んだ巣ではない。今はただ火によることの外は、この不思議な小珠の本体を知ることはできぬと云うのである。

彼のこの一言をひたすら待ち構えてた諸人に異議のあろうはずは無い。御家老のあっぱれ名案として、一議なくことは決して、立処に一抱いに余る大火鉢が、一座の中央に持ち出された。火鉢には紫焔を吐いて燃え熾(さか)る炭火が面をも焦すばかりに盛ってある。

矩広に一礼すると、白髪の老体を鞠躬如(きっきゅうじょ)として躙(にじ)り寄った蠣崎某は、恭(うやう)やしく懐中から取り出した白紙を口にくわえると、いかほどかの大事を成し遂げたる様、決然と眉を挙げ、一粒の青玉を※のうちに投じたのである。

火花を散らす様にして、赫々(かくかく)と燃え立つ真紅のただ中に置かれた一顆の青玉は、さながら天外から雫(したた)り落ちた一滴の涙の様に見える。

純粋無垢の※色に燃えて、るりは一層るりに、滑らかな肌を滑って舞う※は灼熱の花弁となって青紫の玉蕊(ぎょくずい)を抱いて揺曳(ようえい)する。