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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
「そうだ、これは地名辞典でひかなければ駄目なのじゃないか」
帆村はそこで、また棚を探しまわって、更に大きな地名大辞典をひっぱりだした。そしてDの部をペラペラと繰りひろげた。
「あ、あったぞ!」と帆村は鬼の首をとったように大声で叫んだ。「デジネフ岬というのがある。カムチャッカ半島の東の鼻先のところにある岬の名だ。ベーリング海峡を距てて北アメリカのアラスカに対しているそうだ。これに違いない」
彼はそれからタイムスの世界大地図をまた担ぎだして、カムチャッカ半島の部の頁を繰った。たしかに有る有る。東に伸びた七面鳥の嘴の尖った先のようなところにある岬の名だ。ベーリング海峡を距てて右の方を見ると、そこに海亀の頭のようなアラスカの突端が鼻を突合したように迫っていた。そして、何気なくそこを見ると彼を狂喜させるようなものが目についた。
「ああ。もう一つの方は、向うから転げこんで来たじゃないか。プリンス、オヴ、ウェールス岬――つまり P. R. WALES はその略記号なのだ。これで読めた。この暗号は、ベーリング海峡を挟んだ二つの岬の名を示しているのだ!」
しかし何故そんな地名を暗号の上に掲げてあるのだろう? それを考えた時、帆村探偵はハタと行き止りの露地につきあたったような気がした。