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りゅうこうさっかのし

流行作家の死

野村 胡堂

「新青年」1932(昭和7)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页

青空文庫

薄い白粉、濃い口紅、公卿様のような、濃い太い眉の下に、深い瞳が媚を含んで、頬から頸へかけての曲線などは、何んとも言えない魅惑です。

黒以外の色を忘れて了ったと言ったような洋服、華奢な脚を重ねると、身体が不安定になって、柔かい肱がゆらりゆらりと、足の勇に触れます。

「立花さん、勇の野郎が、近頃恋患いをして居るんです」

「あら古風ねえ、相手は?」

「言おうか勇」

「止せやい兄貴」

足の勇はすっかり赤くなって了いました。

「極り悪がる柄かよ、勇」と千種。

「可哀そうにすっかり憂鬱になって居らっしゃるじゃありませんか」

「勇が恋患いをしたんだから、年代記ものですよ。此間っからすっかり音痴メンタルになって居るから、何うしたのかって訊くと――」

「何んです、その音痴メンタルと言うのは?」

「センチメンタル見たいなものですが、勇のは少し馬鹿気て居るから音痴メンタルで――」

「まア」

「訊問に及ぶと、白状しましたよ」

「何んて――」

「貴方に逢い度いって」

「あら」

「立花秀子さんに逢いたいなんて、身の程を知らない野郎でしょう、駆け出しの新聞記者のくせに」

「そんな事無いワ、ねえ早坂さん」

「尤、これでも文学士なんで、学問よりはラグビーの方が出来がよかったが、そんなに三下でもありません。