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るてん
流転
山下 利三郎
「探偵趣味」1927(昭和2)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,715 字 · 12 页
駆除してしまったあの中谷、今日私を他郷へ流転の旅に送出そうとした中谷が来ているのだ。
私は少時そこに立縮んでいました。
ところが或事に気付いた私は悸然としました、外でもありません。中谷なら髪を長く伸している筈ですのに、いま映った影法師はたしか毬栗頭だったではありませんか。
不思議さのあまり呆然そこに佇んでいると、不意に背後から私の利腕をぐッと掴んだものがあります、愕いて振顧ると見も知らない男が私の方を睨みつけながら、ぐいぐい腕を引張ります。不意ではあり何のことだか夢のような心持で、抵抗いもせず扈いてゆくと、その男は私を蕗子の家の表口から連れこみました。
すべてこの出来事が私にとって解けない謎だったのです。
台所には蕗子の妹で十三か四になる艶子が、近所の内儀さんたち二三人に囲まれて、畳に打伏したまま潸々と泣いていました。
その次の間の仏壇にはつい先月窒扶斯で亡くなった母親の位牌が、灯明の灯にてらされながら、立ちのぼる淋しい香煙に絡まれていました。その次が蕗子の居間です。
内部の情景を一目見せられた私は、想わずあっと愕きの叫びを立てましたが、俄に体中が慄え出し、奥歯のかちかち触れ合うのが止みません……何という惨たらしい出来ごとでしょう。