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るてん
流転
山下 利三郎
「探偵趣味」1927(昭和2)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,715 字 · 12 页
医者らしい男の外に制服の警官たちが、険しい眼付で私を迎えたその脚下には、蕗子が白い胸も露わにあけはだけたまま倒れています。
蒼白い蝋のような頬には髪が乱れかかり、その頸には燃えるような真紅の紐が捲きつけてありました。
そして呆れている私の顔を見て、冷ら笑っている警官の手には何と、誰が封を切ったものか私から蕗子に宛てて投込だ手紙が握られていました。それきり私はすッと四辺が暗くなって深い深い谿へ落ちてゆくように感じましたが、その後は誰が何を云ったのやら、判然とおぼえて居りません。
けれども現実は飽くまで現実です。
蕗子殺害の嫌疑をうけた私は厳しい取調べをうけました。私が急に家を畳んで旅に出ようとしたのが一番いけなかったので、旅立とうとした悲壮な心持なんかは説明したところで係官にはよく理解ができなかったのです。中谷も参考人として喚ばれましたが、親しかった以前に引かえて、彼は冷然と私に不利な証言をしました。
現場不在証明……そんなことは出来ませんでした、何でも蕗子が殺された時間には、私はまだ空家になった私の家でただ一人、行李に凭れかかって黙想に耽っていたのでしたから。