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あさくさがみ

浅草紙

寺田 寅彦

「東京日日新聞」1921(大正10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,649 字 · 8 页

青空文庫

これらの小片は動植物界のものばかりでなく鉱物界からのものもあった。斜めに日光にすかして見ると、雲母の小片が銀色の鱗のようにきらきら光っていた。

だんだん見て行くうちにこの沢山な物のかけらの歴史がかなりに面白いもののように思われて来た。何の関係もない色々の工場で製造された種々の物品がさまざまの道を通ってある家の紙屑籠で一度集合した後に、また他の家から来た屑と混合して製紙場の槽から流れ出すまでの径路に、どれほどの複雑な世相が纏綿していたか、こう一枚の浅草紙になってしまった今では再びそれをたどって見るようはなかった。私はただ漠然と日常の世界に張り渡された因果の網目の限りもない複雑さを思い浮べるに過ぎなかった。

あらゆる方面から来る材料が一つの釜で混ぜられ、こなされて、それからまた新しい一つのものが生れるという過程は、人間の精神界の製作品にもそれに類似した過程のある事を聯想させない訳にはゆかなかった。

そのような聯想から私はふとエマーソンが「シェークスピア論」の冒頭に書いてある言葉を思いだした。「価値のある独創は他人に似ないという事ではない。」「最大の天才は最も負債の多い人である。