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あさくさがみ

浅草紙

寺田 寅彦

「東京日日新聞」1921(大正10)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,649 字 · 8 页

青空文庫

そうかと云って本当に偉大なものが全くの借り物であるという事もありようはない。それで何でも人からくれるものが善いものであれば何もおせっかいな詮議などはしないで単純にそれを貰って、直接くれたその人に御礼を云うのが、通例最も賢い人であり、いつでも最も幸福な人である。」

この文辞の間にはラスキンの癇癪から出た皮肉も交じってはいるが、ともかくもある意味ではやはり思想上の浅草紙の弁護のようにも思われる。

エマーソンとラスキンの言葉を加えて二で割って、もう一遍これを現在のある過激な思想で割るとどうなるだろう。これは割り切れないかもしれない。もし割り切れたら、その答はどうなるだろう。あらゆる思想上の偉人は結局最も意気地のない人間であったという事にでもなるだろうか。

魔術師でない限り、何もない真空からたとえ一片の浅草紙でも創造する事は出来そうに思われない。しかし紙の材料をもっと精選し、もっとよくこなし、もういっそうよく洗濯して、純白な平滑な、光沢があって堅実な紙に仕上げる事は出来るはずである。マッチのペーパーや活字の断片がそのままに眼につくうちはまだ改良の余地はある。