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あさまふんかこう

浅間噴火口

豊島 与志雄

「文芸春秋」1938(昭和13)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,938 字 · 24 页

青空文庫

――李がまだ朝鮮にいた頃、その地に、日本人の専売局の役人がいて、その人が始終尺八を吹いていた。李は大変その「竹の笛」に心惹かれた。ところがその人が、或る時虎狩りに山奥へ行き、崖から落ちて負傷してるところを、虎のために身体の半分ばかり食われてしまった。李の家の人たちが先導となり、非常な危険を冒して、彼の半分の身体を持ち返った。その時、遺族の人から「竹の笛」を貰ったのである。其後、尺八のことを調べてみると、これは昔虚無僧たちにとっては、修道の具であり、また楽器であり、また剣であった。大変よい物が手にはいったと、自分も虚無僧の心を以てあれを大切に持っているのである。

「おばさんにも分るでしょう。」

正枝はただぼんやり肯いた。作りごとのような話の筋と李の真面目な調子と、ちぐはぐな気持だった。

「よい竹です、見て下さい。」

李はすぐ立上って、尺八を取りに、急いで二階に上っていった。

正枝はほっと溜息をついた。それから和やかな微笑を浮べた。