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よくそうのはなよめ
浴槽の花嫁-世界怪奇実話1
牧 逸馬
牧逸馬『浴槽の花嫁-世界怪奇実話1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:浴槽の花嫁、女肉を料理する男。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 48,908 字 · 96 页
これは、男のほうから街上の売春婦を呼びとめる場合の、一つのカムフラアジュ的常法である。ピンチン街は、ユダヤ人の小商人の住宅などが並んでいて、入口が円門のようになっている家が多い。このころのロンドンだからあいかわらず霧がかかってはいたが、霧の奥に月のある晩だったので、二人は、その一つのアウチの下に人目を避けて立話しした。
「どこか君の知ってる静かなところへ伴れてってくれないか。」
男はこう言ったという。言いながらズボンのポケットを揺すぶって、金を鳴らして聞かせた。このとおり金を持っているというのだ。
ここでライオンスは、この男の語調には多分のアメリカ訛りがあったと証言している。各国人を相手にする売笑婦の言だから、この点は比較的信をおけるはずだが、ライオンスは、たしかにその男は「アメリカ人か、さもなければ長くアメリカにいたことのある者」に相違ないと、ブラウン氏の前で断言した。
そして、その交渉を進めている間も、男は、人のくるのを恐れるように、絶えず首を動かして往来の左右に眼を配っていた。リツパア事件で、この辺の売春婦は顫えあがっている最中である。ほんとなら、ライオンスもこうして夜更けの危険に身を曝さずに家を引っ込んでいたいのだが、それでは稼業があがったりだからこわごわ出て来たのだ。