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うみへかえるおじさん
海へ帰るおじさん
小川 未明
「せうがく三年生」1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,456 字 · 3 页
「きっと、用事があってこられなくなったんでしょう。また来年会われますよ。」と、お母さんは、おっしゃいました。
おじさんは、お約束をしたように、東京へやってきたのです。そして、毎晩のように、露店へかにと、海ほおずきと、松を出していました。しかし、そこは、武ちゃんや、ゆう子さんの住む町からはなれていたのです。武ちゃんのような男の子がかにを買うと、おじさんは、武ちゃんではないかと、その子の顔をのぞきました。また、ゆう子さんのような女の子が海ほおずきを買うと、ゆう子さんではないかと、おじさんは、後ろ姿を見送りました。けれど、ついに二人には出あわなかったのです。そのうちに、松の木は都会の煙や、ほこりがかかって、だんだん元気がなくなりました。夜風が吹くと、松の木はあの海岸の岩山をなつかしく思いました。
「おいおい、さばが釣れるころだ。おれも、浜へ帰ろうか。」と、おじさんは、ある日、残ったかにや、海ほおずきや、松の木を車に乗せて、避暑客も少なくなって、静かになった、自分の村を指して帰っていきました。空の星の光が、だんだん冴えて、町の中でも、秋の近づいたのが、わかるようになりました。