轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あざらしとう

海豹島

久生 十蘭

「大陸」1939(昭和14)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,311 字 · 48 页

青空文庫

結局、躁暴発作の難を避けるには、入口の土間にたてこもるほかないので、狭山を刺激しないように注意を払いながら、寝具と若干の食料をソロソロと土間に運びいれ、扉に鍵をかけたが、それだけでは安心できないので、扉の前に木箱と樽を積み重ねて障壁をつくり、万一のために武器を用意した。武器というのは一本の短艇の鉄架なので、これほど手頼りのない武器もすくない。非力な手に握られた一本のクラッチが、身を護るのにどれほどの力を貸してくれることか、心細いかぎりであった。

土間の煖炉に火を燃しつけたうえで、不意の闖入に備えるために障壁に凭れて眠ることにした。狭山が無理に扉を押し開けようとすると、樽か木箱の一つが私の頭上に落下してくるはずで、それによって眼をさまし、いちはやく戸外に避難し得る便利があるからである。とはいえ、たとえ小屋をぬけだして島の端まで逃げのびることができたとしても、その末はどうなるのであろう。氷原の上には酷烈な寒気が私を待ちかまえ、その端にはオホーツク海の怒濤が轟くような音をたてて荒れ狂っている。私は鉄架を握りしめ、障壁に凭れて眼を閉じたが、恐怖と憂悶に胸をとざされ、とうとう一睡もすることができなかった。