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なみだをもってせいぎをささえる
涙をもつて正義をささえる
金森 徳次郎
「第八回検察文化の会」1956(昭和31)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,332 字 · 38 页
かつては不とどきな奴だといつておつたのが、不とどきが消されて、而も逆に高き地位におかれるというようなことになつたこともあるのです。これは焼き払うべき書物であると言われておつたものが、本当に貴まれるものになつて来たということもあります。そうなると正義いずこにあるか。従つて正義をまもるべき人は例えば検察官などは、そういうことがよくわかるだけの能力がなければならぬ。裁判官であるならば矢張りそういうことがよくわかるだけの裁判官でなければならぬという気がいたします。
尾崎士郎という小説家で私の友人がありますが、それがかつて美濃部達吉先生の天皇機関説ということを脚本のたね本にして或は小説にも書いておりますが、これは尾崎君が非常に骨を折つて正確に事情を調べて書いてありますが、その中に現われて来る責任者たる役人の言動を見ておりましても、何か不満足なあとがある。
こういうことを考えても正義いずくにあるかということの感が起ります。ここで私が申上げたいことはどうせ社会の正義というものはそんなにはつきりわかるものではございません。歴史はじまつて以来罪人として殺された者幾人、後に至つてこれが立派なものといわれているもの幾多ございます。