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りんらくのせいしゅん

淪落の青春

坂口 安吾

「ろまねすく 第一巻第一号」ろまねすく社、1948(昭和23)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,729 字 · 36 页

青空文庫

異母妹は衣子と云った。五ツ違いであるが、これが又、御多分にもれず当家のヤッカイ者の一人なのである。

十九のとき結婚した。男は土豪の次男坊で、東京で銀行員をしていたが、二人の生活は幸福ではなく、その原因は衣子の我がまゝにあったという話である。男はマジメ一方の秀才であったそうだが、衣子は亭主と打ちとけず、姑とは仲が悪く、昼は外出して映画を見たり遊び歩いていたそうで、男の子が一人できたが、姑にまかせっ放しで母親らしくしてやったことも無かったそうだ。亭主は出征して戦死したが、戦死しなくとも、帰還のあかつきは離縁の肚にきめていたそうで、もちろん婚家へ戻れなくなり、戻る気もない。よって正一郎の完全なるヤッカイ者の一人であるが、子供は婚家にあって一人身であり、なかなか美人だから、いずれはどこか売れ口の見込みがあり、前途があるから家族なみに生活させて貰っている。

貞吉はまだ分家していない。まだ新憲法に半年ほど間のある時で、さすればこれは民法上家族の一員であるから、生きて生家へ戻るとは怪しからん奴めと表向き言うわけにも行かない。

三男の忠雄は戦死した。これは分家分禄して、東京に小さな売家を買ってもらい、女房に二人の子供があるが、家の方は戦火で焼けて、女房子供はその実家へ帰っている。