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ふかがわにょうぼう
深川女房
小栗 風葉
「新小説」1905(明治38)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页
「ああどうも長引いちゃ、お上さんもお寂しいでしょう?」
「寂しいって?」お光は合点の行かぬ顔をして、「なぜね?」
「へへへ、でもお寂しそうに見えますもの……」と胡散くさい目をしながら、「何は、金之助さんは四五日見えませんね?」
お光は黙って顔を眺めた。
「あの人は何でしょう、前から何も親方と知合いというわけじゃないんでしょう?」
「深い知合いというでもないが、小児の時学校が一緒とかで、顔は前から知ってるんだって」
「そうですか。私ゃまたお上さんがお近しいから、そんな縁引きで今度親方のとこへも来なすったんだと思いまして……いえね、金さんの方じゃ知んなさらねえようだが、私ゃ以前あの人の家のじき近所に小僧をしていて、あの人のことはよく知ってますのさ」
「そう、いつごろのこと?」
「そうですね、もう四五年前のことでしょう、お上さんがまだ島田なんぞ結ってなすったころで」
「へえい、じゃ私のこともそのころ知ってて?」
「ええ、お上さんのことはそんなによく知りませんが、でも寄席へなぞ金さんと一緒に来てなすって、あれがお光さんという清元の上手な娘だって、友達から聞いたことはありますんで……金さんも何でしょう、昔馴染みてえので、今でもお上さんが他人のようにゃ思えねえんでしょう」