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ふかがわにょうぼう
深川女房
小栗 風葉
「新小説」1905(明治38)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页
「実はね、お光さん、今日わざわざお邪魔に上りましたのもね、やっぱりその、こないだおいで下さいましたあの話でございますがね。どうでしょう、私はもとよりのこと、お仙もぜひお世話が願いたいとそう申しているのですが……向う様のお口振りはどんなでしょう?」
「向うですか……」と言って、お光は黙って考えている。
媼さんは心もとなげに眺めていたが、一段声を低めて、「これはね、ここだけの話ですが――もっとも、お光さんは何もかも知っておいでなさることだから、お談しせずともだけれど、あれも来年はもう二十でございますからね。それに御存じの通りの為体で、一向支度らしい支度もありませんし、おまけに私という厄介者まで附いているような始末で、正直なところ、今度のような話を取り逃した日には、滅多にもうそういう口はございませんからね……これはお光さんだけへの話ですけれど、私はどうか今度の話が纏まるように、一生懸命お不動様へ願がけしているくらいなんですよ」
「ほほほ、阿母さんもあまりそれは、安く自分で落し過ぎますよ。可哀そうにお仙ちゃんは、縹致だって気立てだってあの通り申し分ないんですもの、そりゃ行こうとなさりゃどんなところへでも……」