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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

「そりゃ言いましたとも。お世話をしようてのに、年を言わないってことがあるものですか、ほほほほ、何ですよ! 阿母さん」

「大きにね、御免なさいよ。そこらに如才のあるようなお光さんでもないのに、私もどうかしていますね、ほほほほ」と媼さんも笑って、「では、写真を持っておいでなさいましてから、その後まだ何とも?」

「はあ、いろいろ何だか用の多い人ですから……」

「いえね、それならば何ですけど、実はね、こないだお光さんのお話の様子では大分お急ぎのようでしたから、それが今日までお沙汰のないとこを見ると、てッきりこれはいけないのだろうとそう思いましてね。じゃ、まだそう気を落したものでもないのでございますね」と言って、媼さんは空笑いをする。

お光も苦笑いをして、「でも、全くあの時は先方の口振りがいかにも急ぎのようでしたものですから……いえ、どッちにしてもほかのこととは違いますし、阿母さんの方だって心待ちにしておいでのことは分ってますから、先方が何とも言って来ないからって、それで打遣っておいちゃ済みませんわね。私もね、実はもうこないだから、一度向うへ出向こう出向こうとそう思っちゃいるんですけど、ついどうも……何分病人を抱えてちっとも体が外せないものですからね」