轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
「中央公論」1920(大正9)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,023 字 · 133 页
一面の、真暗闇である。その暗闇の中を、芝居の「だんまり」のように、徐々と窺(うかが)い寄る奸策を、また、こっそりと構えた術策で身を替す世の中は、若しそれを事実とすれば、あまりに堪らなすぎるものではないか。
然し、母未亡人の言葉によれば、地位の高さと、名声の範囲に応じて、それ等は、拡大されるばかりだというのである。
正隆は、思わず、
「お母さん」
と云った。が、そのままぐっと窒(つま)ってしまった。彼は、何か一言で、その暗闇に何等かの余裕をつけたかった。出来ることなら、一思いに、そんなことばかりがあるものか、と勇ましく否定してしまいたかったのである。が、彼はそうするだけの力がなかった。何より大切な、魂そのものの本然の力が乏しかった。
彼は、母未亡人の胸に巣喰っている、人間だけを騙(たぶら)かす小悪魔の尻尾(しっぽ)を見ることが出来なかったのである。
実際正隆は、或る程度までの放蕩児であり、小さな意味の皮肉家でもあったが、日常生活を構成する平和な余裕が、そこまで彼を、否定的な、氷島のような観察者にはしていなかった。
勿論、彼は騙されたこともある。また、自分に騙される程度のものを、嘘で片付けたこともあった。