轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
「中央公論」1920(大正9)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,023 字 · 133 页
並べられた、二百枚近い紙の背後に、どれほど熱した魂が、彼等の指を見守っているか、せめてただの一度でも考えて見ようともしない人々は、ただ、文字を並べた紙を綴じた物、その「物」によって、留学という、一種の概念の傾きを決定しようとしたのである。
けれども、正隆にとって、二百枚の紙は、決してそれほど軽く見られるものではなかった。その紙背に、あらゆる彼の希望が懸っていた。父の持つ本能的な愛、良人の持つ無自覚な妻への誇、よき生活への憧憬、その他、順調に流れた数年の後、今彼の胸に暖く芽を育て始めた、総ての「よき願い」がどっしりと重く裏づけられていたのである。
然し、始め、彼の仕事が拒絶された理由を知らなかった時の正隆の失望は、寧ろ感傷的な甘みをどこやらに漂わせたものであった。
正隆は、ほんとに落胆したのだ。ほんとに失望したのだ。彼は勿論真田を羨望した。あんな、猪口才(ちょこざい)野郎がと云って、口惜し紛れの悪態も吐いた。今度こそ見ろ! と自分の不運(アンラッキー)を呪いもした。けれども、真田と自分との位置を転換させた何かの理由に対しては、一種の敬遠を抱かずにはいられなかった。