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おんしつのこい
温室の恋
国枝 史郎
「ポケット」1924(大正13)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,010 字 · 22 页
斯う思って私は使女に従いて彼女の家へ行って見ました。さすがに自慢で招んだだけあって彼女の持っている名画の翻刻はいずれも立派な物ばかりでお陰で私は其日一日眼の正月を致しました。
やがて私は案内されて温室へ這入って見ましたが、よくも是程蒐めたものと心から感心されるほど支那の花が蒐められてありました。そうして温室の飾方も支那風なのでございます。と、不思議にも彼女迄が支那風のことを云ったものです。
「私と支那とは昔から離れられない仲なのですよ……。貴郎お嫌い、支那の風は? 似合うに相違ありませんわ、貴郎が支那服を召されたらね」――こんな事を云うではありませんか。
その中酒井も姿を見せ三人で愉快に話し合いましたが、最初に想像したよりも、酒井という男は好人物で、それに大変な剽軽者で、軽口ばかりを利くのでした。その癖本心は熱情家で確に彼女を愛しているのに習性の剽軽が災して云い出すことが出来ないという、一面から云うと気の毒な近代人らしい男なのでそれが私の気に入って直ぐに親しくなりました。
その日を最初に夫れからというものは、毎日毎日彼女の家で日を送くるようになりました。