轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こすいとかれら
湖水と彼等
豊島 与志雄
「新思潮」1914(大正3)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,351 字 · 25 页
と云って彼女は立ち上った二人を驚いて眺めた。「女中が帰って来ましたらお送り致させましょう。」
「いえすぐ其処ですから。」
外には月が煌々と輝いていた。二人に蹤いて外まで出た彼女の心は、興奮したまま朗かに澄み切った。
凡ては潔い静寂のうちに在った。月の光りは水銀のように重たい湖水の面に煙って薄すらとした靄に匂った。そして森や野や遠くの山まで一面に青白い素絹を投げた。それらの上に高く紫紺の空が拡がる。ところどころ星を鏤めた大空の中心に、銀色に輝く月が懸っている。
其処に佇んだ彼女の心には云い知れぬ杳な思いが宿った。少しく離れて前に立っている二人を見ると幼い人達が誓の時になすように、小指と小指とを緊と握り合せている。渚には乗り捨てられた小舟が淋しく繋がれていた。
「ほんとに種々なことを申しましたけれど、」と青年が彼女の方へ向いて云った。「どうかお気になさらないように。」
「いいえそれは私の方から申すことです。」
「実は明日私達は帰る筈です。汽車の都合で朝早いものですから、或はこれでまたお目にかかれないかも知れません。」
彼女の心に冷たいものが入った。それでじっと青年の淋しい顔を眺めた。