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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
「サンデー毎日」大阪毎日新聞社、1926(大正15)年1月3日~5月2日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,335 字 · 137 页
こんな商売にも似合わない、まるで堅気の娘さんの様な子でしたわ」
「極った旦那という様なものは」
「まるでこの間の刑事さん見たいね」〆治は大業に笑いながら「それはありましたわ。松村さんていうの。この近くの山持の息子さんで、それや大変なのぼせ様でした。いいえ、その息子さんの方がよ。でね、この頃長吉さんをひかしてやるなんて話しまで持上っていたのですが。それを長吉さんの方では、又ひどく嫌って、どうしてもウンとはいわなかったのですよ」
「そんなことがあったのかい」
「エエ、あの晩にも、長吉さんの殺された晩ね。二階の大一座のお客様の中に、その松村さんがいて、平常はおとなしい人なんですが、お酒が悪くって、皆の前で長吉さんをひどい目に合せたりしたのです」
「ひどい目って」
「そりゃもう、田舎の人は乱暴ですからね。ぶったり叩いたりしましたの」
「まさかその人が」私は常談の様にいいました。「長吉を殺したんではあるまいね」
「まあ、びっくりするじゃありませんか」私のいい様が悪かったのか、〆治はひどくおじた様で、「それは大丈夫ですわ、あたし刑事さんにもいいましたの、松村さんは宴会のおしまいまで、一度も席をはずしたことはなかったのです。