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ゆがしまのすうじつ

湯ヶ島の数日

宮本 百合子

「文芸時報」1926(大正15)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,903 字 · 4 页

青空文庫

ほんの形ばかりの輪飾が軒、炊事用の清水の出口の樋などにかけてある。目につくのは、荒壁に干し連ねた瘠大根ばかり。羽根をつく女の児一人もなし。凧をあげる男児もなし。日向の枯草堤に、着物だけ着換えた娘三四人詰らなさそうに、通る私達を見物して居た。消防詰所傍の広場で、数人の男児、自働車の古タイアを輪廻しのようにころがして来るのに遭う。太い、つるりと重いゴムの大輪を、一生懸命棒ちぎれで叩いてころがす。そのピシャ、ピシャいう音、ゴムの皮膚的な表面の感じ、一種、間抜けて滑稽な動物を追い走らせて居るような感じを起させた。一寸笑いを刺戟されたのは其だけ。不活溌な生活気分だ。寒中に雪も降らず、色だけ見事で結局は食べられない蜜柑が枝もたわわに実るという地方では、人の感情もそのように弾まないのか。土地の樹木の枝、葉など概して細々密接してついて居ると同じに、行き合う男の容貌、概して道具立てこまかく、手堅そうについて居るところ、興味あり。

美しき富士山を見た。春先のような葉の色のおんばこ、薊を処々に見る。