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げんぞうがはら
源蔵ヶ原
山本 周五郎
「週刊文春」文藝春秋新社、1962(昭和37)年12月17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,843 字 · 28 页
市三がはいってゆくと、その小座敷にはもう三人来ていた。蝶足の膳を五つ、差向いに並べ、行燈が左右に二つ、火鉢が三つ置いてあった。
瓦屋の息子の宗吉をまん中に、こっちが石屋の忠太、向うに左官の又次郎が坐っていた。市三はかれらに頷いて、こっち側の奥の席へ坐った。宗吉がいま始めたところだと云い、又次郎が市あにいお先へとじぎをした。忠太はぶすっとした顔で、自分の盃を市三に差そうとし、気がついたのだろう、途中でやめて、こんどは燗徳利を渡そうとした。
「置いとけよ」と宗吉がそれを止めた、「いま持って来るだろう」
「おれたちのしきたりはおかしいよ」と忠太は手酌で飲みながら云った、「盃のやりとりなし、酌のしっこなし、よそで人と飲むときにはまごつくばかりだ」
女中が酒を持って来た。
「いい修業さ」と宗吉が云った。
「ええ」と女中が宗吉に振向いた。
「おめえじゃねえ」と宗吉が女中に云った、「さっきおやじに断わっておいたが、今日は相談ごとの集まりだから、肴はここにあるだけでいいんだよ」
「はいわかってます」と女中が云った、「お酒のときは手を鳴らして下さい」
女中が去ると、又次郎は自分の持っている