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げんぞうがはら
源蔵ヶ原
山本 周五郎
「週刊文春」文藝春秋新社、1962(昭和37)年12月17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,843 字 · 28 页
とき、みんながお光ぼうを好きになった」
おれもそのなかまの内なんだろうなと、のろが云い、忠太がまた睨みつけた。のろは首をすくめて、からの盃を啜った。
「みんなが好きになったので、誰もちょっかいを出さねえという約束をした」と宗吉は静かな口ぶりで、絵解きでもするように続けた、「――もし手出しをする者があったらこれこれと、みんなの同意で約定もした、人のことは知らねえ、たかが小料理屋の酌おんな、その場の座興だと思った者がいたかもしれねえ、だが、少なくともこのおれだけはしんけんだった」
忠太もさっき同じようなことを云った。自分もしんから好きだったが、おめえに先を越されたので、歯ぎしりをして引込んだと。おれはそれを聞いていながら、おれ自身の気持をそっくり、忠太の口を借りて云っているような気がした。
「人の心の重さ軽さは比べようがねえ」と宗吉は続けて云った、「おめえが、いのちがけだと云い、忠太も同じおもいだったという、おれはその二人よりもっとお光ぼうが好きだった、市三も又ものろも、口には出さねえがおれたち以上に惚れていたかもしれねえ、けれどもおめえが先手を取り、みんなは二人の仲を守ってやろうときめた、わかるな」