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げんぞうがはら
源蔵ヶ原
山本 周五郎
「週刊文春」文藝春秋新社、1962(昭和37)年12月17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,843 字 · 28 页
うえ殺したも同然だが、それほど好きだった、ということは嘘じゃないだろう、おらあ聖人ぶるわけじゃないが、人間てなあみんな弱いもんだ、おれに甲斐性があって、もっと早くお光といっしょになっていたらこんなまちげえも起こらなかったかもしれない、おらあ頭がこんがらがって、いまはなにを考えることもできないが、今夜ここで忠太をどうしようということだけはよしてくれ、そんなことをしたってなんにもなりゃあしないんだ、頼むからおれを独りにしてくれ」
宗吉が市三の腕に触った。
「ひでえもんだ」又次郎がそっぽを向いて呟いた、「こんなひでえこたあありゃあしねえや」
「忠太」と市三が云った、「立てよ」
忠太はうなだれて、まだ泣きながら口の中で云った、「いまやってくれ、おらあどうされたって構わねえ、ここでみんなの思う存分にやってくれ、いっそこのおれを」彼は悲鳴をあげるように叫んだ、「――ここで、叩っ殺してくれ」
「たくさんだ、もういい、たくさんだ」と泰二がひそめた声で云った、「頼んだろう宗ちゃん、おれを独りにしてくれないのか」
こんどは市三が宗吉の肩を叩いた。
「立てよ、忠太」