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げんぞうがはら
源蔵ヶ原
山本 周五郎
「週刊文春」文藝春秋新社、1962(昭和37)年12月17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,843 字 · 28 页
あみえなかったな」
「みんな一遍にいかれちゃった」と又次郎が云った、「それでみんなが、いやそうじゃねえ宗さんだ、宗さんが云いだして、誰もお光ぼうには手を出さねえって約束をしたっけ、どんなことがあっても手を出すなって」
「もしも約束をやぶってちょっかいを出したら」と忠太が切り口上で云った、「みんなで袋叩きにして大川へ放り込み、二度と御朱引き内の土は踏ませねえって、はっきり契約したし、みんなその約束を守って来た筈だ」
「おめえまるで」と又次郎が吃りながら云った、「まるで怒ってるようだぜ」
「ようだ、――へ」忠太は片方の眉をぴくんとあげて舌打ちをした、「ようだもくそもあるか、おらあ、――まあいいや、おめえが相手じゃ肝が煮えるばかりだ」
又次郎がなにか云おうとすると、宗吉がそれを遮って、ほくろはどこにあった、と誰にともなく問いかけた。
「泣きぼくろ」と又次郎が云った、「左の眼尻のここんところだ」
「上唇と鼻の脇とのあいだだ」と市三が云った、「泣きぼくろじゃねえ、あれは運のいいほくろなんだ」
「運のいい、ねえ」と又次郎。
「耳のうしろにもあったっけ」と宗吉が云った、「おれのおふくろとちょうど同じところだった、そう云ったら、それじゃあたしあんたのおっかさんの生れ変りかしらって、べらぼうめ、おふくろはまだ生きてらあ」