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ためいきのへや
溜息の部屋
山本 周五郎
「アサヒグラフ」 1933(昭和8)年4月12日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,369 字 · 15 页
と叫んだ。
「君は、何の権利があって、そんなに僕を侮辱するんだ、僕が何をしたというんだ、僕は君から、一銭だって借りてやしない」
「は、は、は」
安土竜太郎は、調子のはずれたからっぽな声で笑うと、卓子の上へ頭を抱えて俯伏した。勇助はそれを見ると、ふいに刺すような口調で、
「分った」
と云った。
「分ったよ、君。君は八千代に惚れているんだ、僕の女房にさ」
竜太郎はびくっと身を顫わせて顔をあげた。根来勇助は歪んだ、意地の悪い冷笑を、竜太郎の眼へ射込みながら続ける。
「誰でもそうだ、みんなが八千代に惚れる、そして僕に自殺をしろと云う、だが僕だってまんざら馬鹿じゃない、知っているんだ、君がなぜそんなことを云うか――ねえ」
安土竜太郎は拳を握って立上った。するとおりよくそこへ八千代が入って来たのである。それからあとの安芝居をここに書く必要はあるまい、竜太郎と勇助とは握手をした。
十二月三日、土曜日の夜の舞台で、ファウストの宝石の歌をうたいながら、根来八千代は突然に咯血して倒れた。
安土竜太郎とでぶの米八に楽屋へ担ぎこまれた彼女は、炉端に急造された綿天鵞絨の椅子のベッドに横たわって、きょとんとした眼つきで四辺を見廻しながら、