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えんぎしどうろんそうあん

演技指導論草案

伊丹 万作

「映画演出学読本」1940(昭和15)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,562 字 · 27 页

青空文庫

ではない。

○十分なる理解と、十分なる信頼と、そして十分なる可撓性と。俳優の中にこれだけのものを発見した瞬間に演技指導の仕事は天国のように楽しくなり、演出者は自分が天才のように思えてくる。

○この仕事の制度上の位置が俳優に対して上位を占めていることを過信し、無反省に仕事の優位性の上に寝そべることは極めて危険である。しかし実際においては我々はたえず彼らの上に立ち、ときには叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)し、ときには命令しなければならぬ。つまりこの仕事を成り立たせるためには俳優に対して少なくとも形式的には自分自身を上位に保つことが必要なのである。しかしただ漫然と形式上の優位性にあまえることは厳に戒めなければならない。

我々はむしろ仕事の価値観のうえではまったく俳優と等位にあることを信ずべきである。しかしそれにもかかわらず我々はあくまでも自分の仕事に権威を持たなければならない。そしてそのためには仕事自体の持つ形式的な優位性などはすっかり抛擲してしまうほうがいい。そして微量でもいいから自分一個の実力による権威ができあがってきて、つまりは極めて自然に自分自身を優位に導き得るように人間として芸術家としての自分を高めて行く努力をつづけるよりしかたがない。