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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

小栗虫太郎『潜航艇「鷹の城」』。同一底本的分册已合并为一书。收入:潜航艇「鷹の城」、一週一夜物語、地虫、人魚謎お岩殺し。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 页

青空文庫

と同時に、機関の音がやみ、石割一等運転手が舵機室から出てきた。彼はそれまで、あわよくば衝角を狙おうと、操舵していたのであったが、船長の決意は、全員の安危に白旗の信号を送ったのであった。

ところが、その瞬間、四の弾が舷側を貫いて、機関室に命中した。そうして、進行を停止した船に、艇から、次の信号が送られたのであった。

「幹部船員四名、書類を持って艇に来たれ」

かくて、八住船長以下、犬射事務長、ヴィデ砲手、石割一等運転手の四人が、全員に別れを告げ、船を離れ去ることになったのである。

その直後に、全員が短艇で、四散するさまも、また哀れであった。が、まもなく、室戸丸に最後の瞬間が訪れた……

燃料や食料を、積み得るだけ艇に移したうえ、室戸丸は、五発の砲弾を喰いそのまま藻屑と消えてしまったのである。

室戸丸は、みるみる悲惨な傾斜をなしてゆき、半ば以上も海面に緑色の船腹が現われてきた。やがて、鈍い、遠雷のような響きがしたかと思うと、いきなり船首から真っ縦に水に突き刺った。そして、たかい、長濤のような波紋が、艇をおどろしく揺りはじめたのである。

しかし、艇内に収容されて、最初の駭きというのは、この船が独艇ではなく、墺太利の潜航艇だということであった。