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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
谷崎潤一郎『潤一郎ラビリンスV――少年の王国』。同一底本的分册已合并为一书。收入:小僧の夢、小さな王国、二人の稚児。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 页
「浮世が幻であるとしたら、女人もきっと美しい幻なのだ。幻なればこそ、凡夫は其れに迷わされるのだ。ちょうど深山を行く旅人が、狭霧の中に迷うように。」
いろ/\考え抜いた末に、二人は斯う云う判断に到達した。美しい幻、美しい虚無、―――それが女人と云うものであると、否でも応でも決めてしまわなければ、二人の理性はどうしても満足を得られなかった。
年下の瑠璃光丸の好奇心は、恰も幼児がお伽噺の楽園を慕うような、淡い気紛れなものであったが、年上の千手丸の胸に蟠って居るものは、好奇心と云う言葉では表わせないほどに強かった。夜な/\彼と向い合って、すや/\と熟睡する瑠璃光丸の無心な寝顔を眺めては、自分ばかりが何故こうまで頭を悩ますのであろうと、彼は他人の無邪気さを羨まずには居られなかった。そうしてたま/\眼を潰れば、眼瞼のうちに種々雑多な女人の俤があり/\と浮かんで、夜もすがら彼の眠を騒がせる。或る時は三十二相を具足する御佛の姿となって、紫磨金の光の中に彼を抱擁するかと見たり、或る時は阿鼻地獄の獄卒の相を現じて、十八本の角の先から燃え上る炎の舌で、刹那に彼を焼き殺すかと見たりする。