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とろ

瀞

佐藤 垢石

「続たぬき汁」星書房、1946(昭和21)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,908 字 · 30 页

青空文庫

この川の岩質は、鮎の質を立派に育てない。それは、火山岩か火成岩が川敷に押しひろがっているからである。火成岩を基盤とする山々を源とする川の水質は、水成岩の山々を源とする水に比べると、どういうものかその川に育つ鮎は香気が薄い。そして、丸々とは肥えないのである。殊に、脂肪が薄い憾みが多い。

これは、火成岩や火山岩に発する水には、鮎が常食として好む良質の硅藻、藍藻、緑藻などが生まれぬためであろうと思う。

それに引き替え、北山川の水を慕う鮎は、まことに立派な姿と香気とを持っているのである。河相の合流で見れば明らかに区別されるように、十津川の川底の石は灰色に小型で、粗品であるのに、北山川の石は大きく滑らかに、青く白く淡紅に、この川の上流である吉野地方一帯に古成層の岩質が押しひろがっているのに気づくであろう。

また十津川の鮎の腹には小砂が入っているけれど、北山川の鮎の腹には砂がない。やはりこれも、岩質からくる関係であるかも知れぬ。

北山川は、木津呂、下瀞、上瀞をへて次第に上流へ遡るほど、鮎の姿も味も香気も立派になるのである。さらに、三重県東牟婁郡七色方面まで遡れば、鮎は七、八十匁の大きさに育ち、七月の盛季には、背や頭の細かい脂肪がほどよく乗って、塩焼きにも、刺身にも天下の絶品のうちに数えられる。