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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

「いったい、今、時刻は何時なんだろうね」

と、乗組員のひとりが、同僚に訊ねた。

「お昼頃だろうね。ほら、太陽は頭の上に輝いているよ」

彼は丸窓を通して、上を指した。

「でもへんだぜ、この火星へ着陸してからもう四時間は過ぎたのに、太陽は初めからほとんど同じように、頭の上に輝いているんだからね」

「そんなばかなことがあってたまるか」

「だって、それは本当だから仕方がない」

「それはこういうわけさ」と、通りかかったマートン技師が笑いながらいった。

「火星の上では、一日が四十八時間なんだもの。つまり火星は地球の約半分の遅い速さで廻っているので、二倍の時間をかけないと一日分を廻り切らないのだ」

「へへえ、そいつはやり切れないな。三度の食事に、二倍ずつ食べないと、腹が減って目がまわっちまうぜ」

「なあに、一日に六度食べればいいのさ」

「いや、そうはいかないぜ。夜が二十四時間もつづくんだろう。二十四時間を何にも食べないで生きていられるだろうか」

「さあ、それはちょっとつらいね。途中で一ぺん起きて食事をし、それからまた続きを睡るってえことになるかな」

「なんだか訳が分らなくなった。どうも厄介な土地へ来たもんだ。