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かせいたんけん
火星探険
海野 十三
「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页
ネッドは、この自動車に積んであった電気蓄音器をかけてみようといい出した。河合もそれにさんせいしたが、電蓄がこわれていないかと心配した。ところが、やってみると器械はちゃんと廻り出して、あの愉快な「證城寺の狸ばやし」が高声器から高らかに流れ出した。
「あっ、これはいいや。皆で、自動車の上で狸踊をおどろうや」
「よし、ぼくもやるぞ」
黙りやの張も、ネッドにつられてうかれ出した。それに山木を加えて三人が、箱自動車のうえであの愉快な狸踊をはじめたのだった。そして自動車はずんずん火星人の群に近づいていった。いきり立っていた火星人の群。棒を高くふりあげながら、じわじわとつめよせて来たその大群。――それがこのとき急に足を停めた。それからふりあげられていた棍棒みたいなものが、だんだんとおろされ始めた。
そればかりではない。やがて火星人たちはからだを左右へふりはじめた。
「證城寺の狸ばやし」のリズムに調子をあわせて……。
「しめた、火星人は音楽が分るんだな」
運転台の上の河合は、とびあがりたいほどのうれしさに包まれた。彼は自動車のスピードをできるだけゆるめた。そして電蓄の増幅器のつまみをひねって、音を一段と大きくした。