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かせいたんけん
火星探険
海野 十三
「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页
手をふり足をあげ、重そうな頭を動かして、釜の中へ蝗を放りこんだように、ものすごく活発な踊りを始めた。
「おーい、その曲はだめだい」
上から山木がどなった。
「だってにぎやかでいいじゃないか」
「いや、だめだい。にぎやかすぎて、踊の方がついて行けないよ。かわいそうに、ネッドなんかまじめに踊っているもんだから、足がふらふらしているよ」
「困ったねえ。『證城寺』をやるか」
「うん、それよりは軽快なワルツでもやるんだね。そして火星人が少しおちついたところを見計って、外交交渉を始めるんだね。もういい頃合だと思うよ」
「なるほど、それでは何がいいかな。そうだ、『ドナウ河の漣』を掛けよう」
高声器から「ドナウ河の漣」の軽快なリズムが響きはじめると、火星人たちは一せいにしずかになった。そして次第にからだを左右にゆすって、波の寄せるような運動をくりかえすのだった。
山木が下りて来た。そのあとから張とネッドが下りて来た。
「じゃあ三人で行ってみるかね。君はここにいて、音楽をつづけてくれたまえ」
山木は河合にそういった。
「大丈夫かい。まだ早いんじゃないか」
「いや、今が頃合いだ」
自信があるらしく山木はそういって、張とネッドをさしまねくと、大胆にも砂の上をぱたぱたと踏んで、火星人の群へ近づいていった。