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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

「おい張、ぼくたちは一体どうなるだろうね」

地蔵さまのように立っていた張は、ネッドの手をやさしくなでてやった。そしていった。

「大丈夫だ。心配するなよ。今にうまく解決する」

「ほんとうかい。でも、相手のけんまくは相当強いぜ。逃げてかえろうか」

「まあ待て、動いてはよくない。ぼくのように落付いているんだ」

「だめだよ。ぼくは落付けやしないよ」

「ネッド」

「なんだ、張」

「お前は忘れたか、牛頭仙人のことを」

「ああ牛頭仙人……それはお前のことだ」

「そうだろう。お前はいつも大仙人のことを信じていた。その大仙人は、さっきからひそかにあの霊現あらたかなる水晶をなでてて、占っていたんだ。ほら、水晶はこのとおりぼくの腰にぶら下っている袋の中にあるんだ。占ってみると、たしかに今の急場は大丈夫しのげるとお告げが出たぞ。安心しろ」

「え、お告げが出たか。そうか。そんなら安心した」

ネッドは急に元気になっていった。

「それにしても、このむずかしい場面が、どうしてうまく解決するのだろうか」

ブブンはなおも声高にどなっていた。そのときとつぜん、音楽が始まった。牛乳配達の自動車の運転台にひとりで待っている河合が、電気蓄音器を鳴らし始めたのだ。