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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

「そうはいかないよ。宇宙の迷子になって、そのはては食糧がなくなって餓死だよ」

「餓死? いやだねえ、いよいよいやだねえ。僕は日頃からくいしん坊だから、餓死となれば第一番に死んじまうよ。何とかならないものかなあ」

「なにしろエンジンが真赤になってひとりで働いていてねえ、どうにも手がつけられないんだそうだ」

「方向舵ぐらい曲げられるだろうが」

「いや、それもだめだ。舵を曲げようとしても、さっぱりいうことをきかないそうだ」

「うわあ、それじゃ絶望じゃないか」

いくらさわいでみても、宇宙艇が地上へ引返す様子はなかった。そればかりか、原子エンジンは、ますます調子づいて、艇の尾部からものすごいいきおいで瓦斯を噴射するので宇宙艇の速度はだんだんあがって行く。時速二千キロが、三千キロになり、四千キロになり、今や時速四千五百キロの目盛を越えようとしている。

地球へ帰りたい一心で、危険とは知りつつ落下傘で艇外へ脱出した者も三人あった。四人の少年は、大人ほど取乱してはいなかった。はじめはちょっとおどろいたが、まもなく少年たちは窓の外に見られるめずらしい下界の風景にうち興じて、恐さも不安も知らないように見えた。