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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

「はやく渡せといっても、お前、これをにぎってどうするつもりか」

ハルクは、くるしさのあまり、このナイフでわれとわが咽喉をかききって、自殺するのではなかろうか、そう思った竹見は、友にナイフを手わたすことを、ためらった。

「ええい、こっちへよこせ!」

とつぜんハルクは、半身をおこすと、竹見の手から、ナイフをうばった。が、ナイフをうばったというだけのことだ。そのまま、また土間にかおを伏せて、うんうんと、高くうなりだした。

「ほら、そんな無理をするから、余計にくるしくなるじゃないか。おい、ハルク、おれが、これから出かけて、医者をさがして、呼んできてやる」

「い、医者なんか、だめだ。お、おれは、自分で、やるんだ」

と、いったかと思うと、ハルクは、とつぜん、むくむくと起きあがった。

「おい、どうするんだ」

ハルクは、無言で、いきなり、べりべりと音をさせて、右脚の入っているズボンを、ひきさいた。

「竹、おれのバンドをといて、右脚のつけ根を、お、思い切り、ぎゅっと縛ってくれ。早く、早くたのむ」

ハルクは、歯をくいしばりつつ、自分の右の太ももを指した。

「あ、そうか、もっと上を、しばるんだな」