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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

「鉱石である」

鉱石である――という返事が、ばかにはやくとびだした。まるでさっきからこれをきかれることを予想して、すぐ出せるように用意しておいた返事のように聞えた。

「鉱石というと、どんな種類の鉱石ですか」

ノルマン船長のくちびるが、ぎゅッとまがった。

「もう用事はすんだのだ。いそいで帰りたまえ」

ノルマン船長は、はじめて叱咤するようにさけんだ。彼の語尾は、かすかにふるえおびていた。

事務長の質問が、ノルマンの気にさわったらしい。

「ねえ、事務長」

そのとき、事務長のうしろからこえをかけた者がある。それは一緒にノーマ号へのりつけた一行の中の一名、丸本という水夫だった。

「なんだ」

「本船からの信号でさあ。はやくかえってこいといってますぜ」

事務長は、うむとくびをふって、

「ああ、いますぐかえると、手旗信号で返事をしてくれ」

「ねえ、事務長」

「なんだ。まだなにかあるのか」

「へえ、もう一つ、厄介なことをいってきました。虎船長から、じきじきの命令でさあ」

といって、常日ごろ、ばかに年寄りじみたことをいうので、“お爺”と綽名のある丸本水夫だが、すこし当惑の色が見える。