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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

連日みたし切れないむねを持てあましていた平靖号の船員たちも、異色ある亜熱帯地方の風物が、両岸のうえにながめられるようになって、すこしばかし、なぐさめられた。

「いよいよ、やってきたぜ。あれみろ、妙なかっこうの寺院みたいなものが見えらあ」

「ふん、あれはノートル・ダムだろう。おれたち俘虜ども一同そろって、はやく武運をさずけたまえと、おいのりにいこうじゃないか」

「やかましいやい。捕虜だなんて、おもしろくねえことを、いうもんじゃない」

そのうちに、両船は相前後して、投錨した。お互いに、すねにきずをもっていることとて、仏官憲の臨検を、極度に気にした。だが、そこはどっちも、相当のしたたかもののことだから、なんとかかんとかいって、うまく仏官憲を丸めて、退船してもらった。狐と狸とで、同じ人間を化かしっこしたようなものだった。臨検官は、御丁寧にも二重に化かされていながら、なんにも気がつかないというのだから、まことに御苦労さまな次第だった。

怪人ポーニンが、平靖号にのりこんできたのは、その夜ふけてのことだった。

丁度虎船長は、明日積荷を売るについて、その準備に、帳簿と書類の間にうずもれて、きりきりまいの最中だった。