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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

だから彼は、その夜の饗宴のことをすっかりたのんでしまった後で、ボーイに、ビールを所望した。

「じゃあ、旦那さん。あっちに、すずしいしずかな席がございますから……」

と、ボーイは、警部モロを、この酒場の名のとおりの雑草園の方へ案内し、そこにところどころに置いてある野外席の卓子へみちびいた。

むしあつい夜だったので、そよ風吹くその卓子は、警部モロを悦ばせた。そして彼は、ここ暫くつづいた敵中の緊張を、一時ほぐすために、ビールの大コップをとりあげたのだった。それは、実にすばらしいビールのあじだった。モロは、生れてはじめて、ビールがこんなうまいものかと、おどろいた。そうであろう、そのビールこそ、彼の末期の水であったのだから。

雑草園のものかげに、巨人ハルクは、原地人のふくを着て身をしのばせていたが、船長ノルマンからいいつけられたとおり、モロの卓子に、当のモロの外、誰もいなくなったのを見すまし、例のステッキを持って、のこのこ出ていった。

「もし旦那さん。ステッキをおとどけ申します」

警部モロは、もうすこしあかいかおになっていたが、

「ステッキ? 一体そりゃ何事だ」