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はいいろのあねとももいろのいもうと
灰色の姉と桃色の妹
小川 未明
「愛国婦人 470号」1921(大正10)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,817 字 · 8 页
そして、野原を歩いて、その音のきこえる方へ歩いていました。
そのとき、がけの下の、白い花の咲く木の下にたたずんでいた姉は、空を仰いで、
「妹は、町へいった。」といいました。
姉は白い花の咲く木の下から離れて、自分も町の方へ歩いていきました。
妹は、どこへいったか、その姿は見えませんでした。今度ばかりは、姉から永久に別れて、もう家には、けっして帰ってきまいと思ったのでしょう。それで、姉に気づかれないように姿を隠してしまったのです。
町はにぎやかでした。美しい、そして快活な妹は、だれからでも喜ばれたにちがいありません。人々は、みんな妹を歓迎したにちがいありません。
これに反して、陰気な、さびしい姉は、またけっしてだれからも愛されなかったにちがいない。姉は独り町の中をさまよって、妹のいる場所を探していました。
広い、往来の四つ角のところに花屋がありました。温室の中には、外国の草花が、咲き乱れていました。また、店頭のガラス戸の内側には、紅・青・白・紫のいろいろの花が、いい香気を放っていました。その店の前にいくと、姉は内側をのぞきました。花を大好きな妹は、ここに立ち寄ったにちがいがないと思ったからであります。