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むげつものがたり

無月物語

久生 十蘭

「オール讀物」1950(昭和25)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,485 字 · 36 页

青空文庫

それから三日ばかり後の夜、泰文の留守の間に、朝霞の兄の清成と清経が五人ばかりの青侍を連れてやってきて、すぐ朝霞のいる北ノ坪へ行った。朝霞は褥に入っていたが、縁を踏んでくる足音におどろいて起きあがると、長兄の清成が六尺ばかりの綱を、次兄の清経が三尺ほどの棒を持って入って来るのを見た。

「この夜更けに、なにをしにいらしたんです」

「気の毒だが、お前を始末しにきた。なにしろ、こんな因縁になってしまって」

「それは泰文の言いつけですか」

「そうだ」

清経がうなずきながらいった。

「したいことがあるならしなさい、待っているから」

「なにといって、べつに……どうせ、こんなことになるのだろうと思っていました」

「いい覚悟だ。花世はとなりに寝ているだろう。むこうへやっておくほうがよくはないか」

「そうですね、どうかそうしてください」

清成が几帳の蔭から花世を抱きあげて出て行ったが、すぐ戻ってきた。

「では、やるから」

「いまさらのようですが、保平とはなにもなかったのです」

「そうだろう。しかしこういう評判が立ったのだから、あきらめてもらうほかはない」

「わかっています」

「怖くないように帛で眼隠しをしてやる。