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むほうもの
無法者
豊島 与志雄
「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页
「フグの茶漬けとかを食べさしてくれる家があるそうですが、どこなんですの。」
「なあに、頼めばどこだって出来ますよ。」
「いいえ、あなたの御懇意な家……なんという家なんですの。」
志村はカクテルを飲んだ。
「わたくし、フグが大好きですから、ちょっと行ってみたくなりましたわ。なんという家が、教えて下さいません。お願いですのよ。」
「お願いだなんて……。」
庭のかなた、百日紅の白っぽい幹を交えて椿がこんもりと茂ってるのを背景に、大きな自然石が配置され、その石のたもとに、黄色い葉が僅か散り残ってる一群れの山吹があった。それに志村は眼をとめた。
「やまぶき、という家ですが……。」
「やまぶき、お菓子屋みたいな名前ですこと。」
笑いかけておいて、房代夫人は急に真面目になった。
「やまぶきだかなんだか存じませんが、わたくしが、その割烹旅館とやらへ、お伴しようではございませんか。それとも、わたくしのような肥っちょのお婆さんでは、いけませんかしら。」
志村は首をすくめた。
「分りましたよ。そう叱らないで下さい。」
房代夫人は片手を伸ばして、彼の手首を押えた。
「志村さん、すこし御冗談が過ぎますわよ。