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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页

青空文庫

、いろいろ意見がわかれましたそうですのよ。」

女中たちの陰口とは、恐らく作り話だったろう。然し、木村さんにしろ、土屋さんにしろ、中尾さんにしろ、志村と何等かの関係がある女性たることは事実だった。普通の交際としては少し頻繁すぎるくらい、彼女たちは志村を訪れて来、志村の酒の相手をすることもあれば、時には泊ってゆくこともあった。表面では、彼女たちは志村の和歌の弟子ということになっていたが、実際に和歌を作ってるかどうかは疑問だったのである。

「土屋さんてかたは、あなたの秘蔵弟子らしゅうございますわね。しばらく伺わないでいると、風邪でもひいてるのではありませんかと、先生からお便りがあった、そう仰言ってるんですよ。風邪ですって、面白い言い方ではございませんか。それからまた、正月になったら、どこか温泉にでも行きたいと、先生からお誘いを受けた、そうも仰言ってるんですよ。そしてそのあとが面白いじゃございませんか。わたくし、先生とはなんでもないんですけれど、こんなことを申すと、なにか訳があるように聞えますでしょうか……ふふふ、とお笑いなさるんですよ。なにか訳があるように聞えますでしょうかと、ひとにお聞きなさるところが、素敵でございましょう。