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むち
無知
中谷 宇吉郎
「現代教養講座第二巻 幸福と自由」角川書店、1957(昭和32)年1月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,776 字 · 16 页
識閾の下にあるものを、ちゃんとした意識の形にもって来るには、精神力を必要とする。その精神力を使う労を惜しむ、あるいはそれを逃げる弱さが、無知の本質ともいえよう。精神薄弱症的な要素があるといったのは、このことである。
こういうふうに考えてみると、無知というのは、ものごとを知らないことではなく、考えようとしないことなのである。そういう意味では、合理主義の逆が無知であるといってよい。以下こういう定義の下に無知という言葉を使うことにする。知らないことは罪ではないが、考えようとしないこと、そしてそれが他の人に対して迷惑になる場合は、明らかに罪悪である。無知を罪悪の一つとしたギリシャふうな考え方は結局こういうところにあるのではないかと思われる。
日本の社会には、こういう意味での無知がまだたくさん残っている。無知を合理主義の逆とすると、日本で合理主義というものは、明治以後西欧から輸入された考え方であるから、まだ無知がたくさん残っていても、不思議ではないわけである。
社会の各層に浸み込んでいる考え方を探すには、格言のようなものを見るのが、一法である。格言として残るものは、長い年月にわたって、社会の各層に通じた考え方である。