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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
在线阅读林 不忘《煩悩秘文書(ぼんのうひぶんしょ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,705 字 · 173 页
」
女髪兼安の鍔を丁! と鳴らす。金打して、耳もとに叫ぶと法外先生は微笑を洩らしたきり、それなり一言も口をひらかずに、逝ったのだった。
村人の手で、遺骸は荼毘に付した。お骨を捧げて、今日は明日は江戸の道場へ帰ろうと思いながら、大次郎の傷の癒えも進捗ばかしくないので、二人はまだこうして、この猿の湯に逗留している。
なにしろ、手足に七カ所、胸に大きく一太刀、顔は、一ばんひどく、大小無数の斬り傷なので。
癒りが遅いのである。
床の間に、法外先生の遺骨を安置し、部屋の真ん中に寝床を敷ききりで、伴大次郎、毎日、寝たり起きたりしている。胸から手、足はもちろん、顔にもすっかり白い布を巻き包んでいるところは、あのいつぞやの白の弥四郎頭巾にそっくり――険しくなった双眼だけが、その繃帯の奥から覗いているのである。
夜など、この姿の大次郎にあの弥四郎頭巾を思い出して、千浪は、ひとり秘そかにぞっとすることが多かった。
自分さえ、この七年目の会合に来なかったら、いや、じぶんは来ないわけにはいかなかったが、先生や千浪をお伴れしなかったならば、こんなことにはならなかったものを――そう考えると大次郎は、傷痕に錐を揉み込まれるような思いで、一日に何度となく、床の間の骨壺へ掌を合わせる。