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つばくろ(つばくろ)
燕(つばくろ)
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页
んじゃない、ただ口先だけでうまを合わせていただけなんだ」
「そう云ってしまうな」と相川がなだめた、
「渡貫の気持もわからなくはない、慥かに、かれらの中には口先だけの人間もいるよ、藩政改革という気運に調子を合わせていなければ、自分が時勢にとり残され、若いなかまから嘲笑される、ということを恐れるためにね、――本当のことを云うと、十ちゅう七か八まではそういう人間だと思う」
「九分九厘までがそれだ」
「まあ聞くだけ聞けよ」と相川は同じなだめるような口ぶりで云った、「そういう人間の多いことは慥かだが、気運がもりあがって、いよいよというときが来れば、そういう人間でもないよりあるほうがいい、枯木も山の賑わいと思わず、大きなをあげる焚木というふうに考えないか」
「そんな時期じゃあない、断じてそんな悠暢なときじゃあない」渡貫はせきこんだため言葉がつかえ、唇を舐めて、一語一語をゆっくりと云った、「――いいか、今日もこの屋敷で、老臣たちが密会をする、あるじの佐藤又左衛門、もと江戸家老だった庄野重太夫、これももと側用人の鵜沢帯刀、ことによると現城代の村野主殿も来るかもしれない」